英国EU離脱。EUは加盟国だけのものか?

6月24日、EU離脱の是非をめぐり行われた国民投票の結果、当初の予想に反して離脱派が勝利した。

ちょうど私は移動中。新幹線のニューステロップに大きな衝撃を受ける。フェイスブックにはざわめき。英国に住んでいる友人、住んでいた友人、英国人・外国人含め、私のまわりは圧倒的に残留支持。落胆はいうまでもない。

市場は大荒れ、株・ポンドは急落、円は急伸。残留を唱えた政治家は与野党問わず次々と去っていく。残留支持のスコットランドは、ふたたび住民投票実施はhighly likely. 

離脱の吉凶は、すぐにはわからない。しかし、国民を分断し、国家も分断する危険な箱に手をつけたキャメロン首相は、歴史に残る判断ミスを犯した。離脱推進派は、EUから出て行くこと=「独立」という、衝撃的で、覚えやすいレトリックを巧みに使い、目の前の生活に追われる人々の支持を得た。

「英国とEUにとって悲しい日」。辞任表明したときのキャメロン首相の言葉。野党だった保守党を、ちょうど率い始めた頃や、首相に就任した頃の自信とエネルギーで輝いた彼が懐かしい。

「英国とEUにとって悲しい日」。同様の声明は各国首脳の言葉として何度も伝えられる。

でも、本当にそれだけだろうか。

私は常々、EUはなくてはならないと思ってきた。それは、EU域外の国々を見て強く思う。旧ユーゴやアルバニアがいま国の経済・社会問わず開発に勤しむのはなぜだろう。民族間の戦争を繰り返さない努力をするのは、なぜだろう。

それは、EUがあるから。いますぐでなくとも、いつかEUに加盟し、人々の生活が良くなるという大きな、大きな、熱望があるから。候補国となり、コペンハーゲン基準(法の支配、人権、民主主義、少数民族の保護、市場経済の導入)をなんとか満たした暁には、ユーロピアンになれるという理想があるから。EU加盟のビジョンのもと、各国で多国間・二国間問わず援助が投入されてきた。

英国が抜けたあと、EUの安全保障を不安視する声が広がる。これまでバルカン地域は、EU熱に押され、EUの圧倒的なプレゼンスがあった。民族間の小競り合いがあるときも、選挙実施のときにも、EU加盟の釘を刺され、難しいながらも前に進んできた。EUもまた加盟を外交のカードに使い、過去の歴史から頭を悩まされてきた同地域で影響力を高め、ウクライナ危機で不安が高まる近隣地域の抑止効果を得てきた。

これが、BrexitでEUの影響力が低下するとバルカン地域にどんな影響があるのか。そして、低下したところ、空白部分を埋めようとするのは、「誰」なのか。もうEU域内だけの問題ではない。

「EUに加盟できないとなると、バルカンは、また戦争の時代に逆戻りするだろう。まだこの地域は、(コペンハーゲン基準が唱う)隣国との友好関係構築なんて概念は持ち合わせていない。だって、隣国と思っていないから。5年〜10年で何かが起きることにはならないかもしれない。でも、EUがなければ戦争は絶対に起きる。それがこの地域の歴史だから。」

ある旧ユーゴの友人の言葉。数年前の会話が、いまひときわ強く感じる。









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