夏、それはディアスポラの季節


夏のコソボ。

それは300万人とも言われる海外居住者、
「ディアスポラ」がいっせいに里帰りする季節。

コソボの総人口は180万人。

この小さな国の人々は、
独立の前から旧ユーゴの出稼ぎ労働者として、
ときには紛争時の難民として、
現在にいたるまで職や教育を求めて西側へ移り住んできた。

ユーゴスラヴィアは社会主義国といっても、
人々の移動を制限していなかったため、
最も貧しいコソボでは、当時から欧州の経済大国へ出稼ぎに出る人たちが多かった。

圧倒的な行き先は、ドイツとスイス、追うのはスカンジナビア諸国。
これら国々の送金だけで、コソボGDPの17%を占めている。

祖国を離れたといっても、絆は消えていない。

彼らは頻繁にコソボへ帰り、たいてい月に一回、二三ヶ月に一回、祖国に残る家族、親戚と時間を過ごす。親兄弟、親戚縁者、友人との関係が非常に強いアルバニア人ならでは。

そして、最大の休暇シーズン。
夏にはたくさんのディアスポラが故郷でお金を落としていく。

彼らは陸路でセルビアを横断し、北の国境(セルビア人的にはチェックポイント)を通過してコソボへ入る。いま、夏の終わりには欧州へ戻っていく。



今回、その大移動を目にしてびっくり。


「朝から5時間まちだよ〜」

パスポートコントロールを待つ車列。そのほとんどが高級車ばかり。

BMW、ベンツ、アウディ、ときどきランボルギーニ、ポルシェ。。。次々にやってくる。

プリシュティナの街を見ても、がたがたの道が高そうな車であふれかえってる。

なんじゃこれ。。
ディアスポラとは何者??

謎は、ローカルの友人の言葉で解けた。

曰く、

「夏は見せびらかしの季節よ。出稼ぎ先で決して裕福でない暮らしをしていても、故郷に戻って良く見られたいから、みんな無理して中古の高級車を買って乗り回すの。もちろん、本当に成功してお金持ちになった人もいるけどね。」

「ランボルギーニとポルシェはレンタカーだよ。ドイツで借りて、コソボまで乗ってくるの。こっちで女の子を見つけるために。クジャクみたいなもんだよ。」

そして帰り道、セルビア人の運転手曰く、

「それは、セルビア人も同じ。
外見で見せびらかしたいのは、バルカンの人間のメンタリティなんだ。」


なんじゃそりゃ・・・。


シュマディアを走りながら、閉口した夏の終わりであった。






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